五分後の世界

あまりにも暇な日々が続くので読んでみた。今まで村上龍の小説は読んだことなかったので*1、これがはじめて。
自身が自己最高の長編小説とほめるだけあって、かなり完成された話であると思う。

主人公の小田桐はいつの間にか今まで住んでいた世界とは違う、時計が5分間進んだ5分後の世界が迷い込む。その世界の日本は2度の原爆投下後も終戦をせず、戦争を続行しさらに国土を退廃させ敗北。国土をアメリカ・ロシア・イギリス・中国によって4分割され各国から技術移民が大量に流入、多くの混血児が産まれて純潔の日本人はたったの20数万人のみとなっていた。彼らはアンダーグランドと呼ばれる地下基地に潜りアメリカなどの国連軍といまだに戦っている、という設定でその中で小田桐が体験する話。

すべて小田桐から見た視点で書かれていて、ちょっとグロい所もあるけれど全体的にスピード感もあって読みやすかった。
ただ、最後の終わり方など、やや分かりにくい点もあった気がする。

戦後の日本は偶然の連続で何とか植民地化を逃れることが出来たわけで、どこか一つ違っていれば確かにUGという組織は存在しないだろうにしても、アメリカの植民地となり、今は自治区という状態になっていたかもしれない。その差というのは時間が5分間違うくらい、かもしれない。

なぜ映画化されないのか不思議だけれど、これを映像で表現するにはかなり難しいのでは無いかと思う。戦闘シーンなどはまぁ何とかなりそうだけれど例えばワカマツのコンサートのシーンなど、あの音楽を納得のいくように表現するのはかなり難易度の高いことではないかと思う。小説には映画化した方が良い物と映画化しない方が良い物があって、この小説は後者ではないかな、と思う。

ヒュウガウィルスの方も読みたいな。


五分後の世界
五分後の世界
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村上 龍
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ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界 2

*1:13歳のハローワークやら小説以外の本はいくつか読んだけれど