スカイ・クロラ 森博嗣

スカイ・クロラ (中公文庫)スカイ・クロラ



8月2日に押井守 x Production I.Gという人によっては最強のタッグにも思える組み合わせで映画化されるということで観る前の予習を兼ねて買ってきました。(crawlers | さまざまな情報を集めたサイト)

あまり期待はしてなかったのだけれど読んでみてびっくり。意外に良かった。


以下Amazon.co.jpのあらすじを引用。

僕は戦闘機のパイロット。飛行機に乗るのが日常、人を殺すのが仕事。二人の人間を殺した手でボウリングもすれば、ハンバーガも食べる。戦争がショーとして成立する世界に生み出された大人にならない子供―戦争を仕事に永遠を生きる子供たちの寓話。

基本的に物語は"僕"の視点で淡々と進んでいく。
雰囲気としてはJ.D.サリンジャーキャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)をちょっと上品にした感じ。各章の最初に同じくJ.D.サリンジャーナイン・ストーリーズ (新潮文庫)からの引用文が載せられているのもその辺を意識したものなのかなと勝手に想像。


主人公を始めとする戦闘機乗りのキルドレ達はただ上から命令が下れば空に上がり敵を倒す、世間に対しては無関心でいる。でも全てのことに対して無関心であるかというとそういう訳ではなくて、仲間の死に対してはその時の様子をしっかりと伝え残そうとする。ただ余計なことは言わないし聞かない、自分にとって必要である情報のみを互いに共有していく、そんな世界。


物語は本当に淡々と進んでいき、基本的に主人公の"カンナミ"がその時見たり感じたりしたことしか書いてないので、やや説明不足な部分も多く、所謂"行間を読む"ことが必要になってくる。それはそれで結構難しいことではあるけれどあれこれ想像できる楽しみがあっていいのかも。


このスカイ・クロラはシリーズになっていて時系列では一番最後にあたるとのこと。最後の終わり方はまだ続きそうな書き方であったので、その後が気になるなぁとか思いつつ。


文庫本でページ数も300ちょっととすぐに読み切ることの出来る量なので、映画公開前に予習を兼ねて軽く読んでおくのも良いかも。
何たって"行間を読む"ことを求めてくる物語をあの"Ghost in the shell"やら"イノセンス"やらの押井守が監督するわけなのだから、何も知らずに見に行けばおいてきぼりをくらうのは間違いないって。


以下スカイ・クロラシリーズ。

スカイ・イクリプスはまだ単行本のみで文庫本は未発売のようです。位置づけとしては番外編になるらしい。


8月2日に公開予定の劇場版の予告編は↓