歳月 司馬遼太郎

先日書いたように、歳月を読み終わったので簡単に感想を。

この歳月という小説は、明治初期の司法卿であり参議の江藤新平の生涯を書いてますよ。

まぁ、司馬遼太郎の小説を読むときはいつも思うことなのだけれど、歴史にはここまで個性的な英雄がいたのか、と驚いてしまう。あえてそういう人物を選んで書いているのだけれど、司馬の主人公は誰しも一点に置いては誰にも負けないぐらい優れてるくせに、また他の一点に置いては極めて子どもっぽかったり劣ってたりする。

江藤新平という人物も歳月という小説の中ではそれに当てはまり、司法という世界においては誰にも負けない、おそらく世界随一の能力を持っているにも関わらず、策謀という点に置いてはとても子どもじみている。

彼の不幸は策謀家としての能力に欠けていたのに、薩長の腐敗を見過ごすことが出来ない司法の正義感を持ち合わせていた為、慣れぬ征韓論を支持してもう一度天下を揺るがそうとし、結果として佐賀の乱の首謀者となってしまったところか。
小説中の桂小五郎が言った刑法家に徹していれば、もっと違う形で天下を揺るがすことが出来たかもしれない。


歳月